部門別防護対策

職業被ばく低減で医療現場に求められること

線量限度を超過する可能性のある医療スタッフをいかになくすか

被ばく低減対策 放射線診療従事者 管理者
1.放射線防護教育 防護法の理解 教材の作成と実施
2.防護器具による対策 a.放射線防護具
(防護衣、眼鏡、防護板)
適切な使用 防護具の配備
3.装置、手技による対策 a.適切な装置の取扱
b.適切な手技
トレーニング 装置管理
4.線量モニタリング a.適切な装置の取扱 装着忘れの防止 監視、指導
b.被ばく量の把握 自身の被ばく量の把握と振り返り 限度を超過する可能性があれば介入
c.水晶体線量計 使用 配布基準
d.リアルタイム線量計 高被ばく手技の認識 配備
5.放射線管理体制の構築 規程等の遵守

委員会等の設置、規程・マニュアル等の作成

放射線被ばく管理マネジメントシステムの導入

一般撮影・ポータブル撮影(病棟、手術室等)

立位胸部単純撮影時の散乱線分布

  • 散乱線の広がりを意識する
  • 被ばく量はX線の照射条件(管電圧、管電流、照射時間)に依存する

散乱線の広がり

照射条件、照射部位による線量は異なる

X線透視(非血管系)

X線透視での放射線防護

ERCPや非血管系IVR等では患者介助など散乱線源に近づくこともあり被ばくが多い

X線透視室における散乱線分布

No protective devices

Using protective devices

術者位置(照射野中心から患者横に50 cm)での線量プロファイル

透視、非血管系IVRと手指被ばく

  • 術者の手指は手技上、直接照射野内に入ってしまうことがある
  • 照射野内に術者の手指が映ると、高線量の被ばくになる
  • CTガイド下生検も同様

(対策)

  • 放射線防護手袋の着用
  • 患者を抑える場合は、補助具を使用する
  • 可能な範囲で照射野を絞る
 
 

内視鏡治療における補助具(スコープホルダー)による被ばく低減

内視鏡を使用した透視下治療において、患者に近接しての手技は高被ばくの要因となる。

下の写真のスコープホルダー(矢印)を用いることで、スコープの挿入部付近での介助が不要となり、散乱線源である患者と距離を確保できることから、介助者の被ばく低減につながる。

写真:藤森尚 助教(九州大学病院 肝臓・胆道・膵臓内科)提供

 

モバイルCアーム装置の360度映像

静止画ポイントクラウドデータ動画

血管造影

散乱線の広がり

血管造影:防護板の位置による遮蔽効果の違い

(A)防護板が患者に接近し、有効に散乱線が遮蔽されている
(B)防護板と操作者の間の距離が大きいため、散乱線が様々な方向から到達し、防護効果が低くなる

血管造影室における散乱線分布例

No protective devices

Using protective devices

CT検査

CT検査室の360度映像

 静止画ポイントクラウドデータ動画1動画2

 

散乱線分布

  • CTではX線の出力が高く、数秒の介助でも介助者の被ばくは高くなる
  • 散乱線源は患者で、防護具の使用と少しでも距離を取ることが被ばく低減につながる
 

頭部介助時の低減例

  • スキャン方法を工夫することで低減可能(ただし画質とのトレードオフ)
  • 解除位置の工夫により大幅な低減が可能

CT検査室の3次元散乱線分布

モンテカルロシミュレーションを使用 測定値と計算値の差は平均約10% (n=110)

Fujibuchi, Radiation protection education using virtual reality by visualization of scatter distribution in radiological examination, JRP, 2021

CT検査時の散乱線分布

核医学・PET検査

核医学検査ポジショニング・介助時の放射線防護

  • 距離による防護は有効
  • ガンマ線はエネルギーが高く、防護衣による遮蔽が困難

18 F等 放射性医薬品投与室内の周辺線量当量分布

  • 防護板があっても、患者の腕を出す穴からガンマ線が漏洩するため、可能な範囲で距離をとり観察する

Nagamine, Radiol Phys Technol., 2017

 

放射線治療

外部放射線治療

  • 適切に遮蔽された施設では被曝線量は最小限(またはゼロ)である。高エネルギー放射線を使用した場合、照射直後は装置のターゲット付近が放射化しており、数100 μSv/hとなることもある。

(参考資料)放射線治療装置の放射化物に関する疑問にお答えします -放射線治療装置の点検・更新・撤去に携わる方へ-

 

小線源治療

  • 小線源治療部門では、スタッフによる放射線被ばくが発生する(例:シード、針、ワイヤ、管等の密封線源の装填、関連する透視検査など)積極的に管理しなければならない被ばく線量の可能性がある。

 

(参考:Publication 139 Occupational Radiological Protection in Interventional Procedures (2018) 要旨

放射線管理室

放射線被ばく管理マネジメントシステムの導入

  • 放射線被ばく管理マネジメントシステムは、PDCAサイクルを通じて安全衛生管理を自主的・継続的に実施する仕組みである労働安全衛生マネジメントシステムを放射線被ばく管理に応用したもので、放射線業務従事者等の被ばく低減を目的に、組織トップによる基本方針の表明、リスクアセスメント、目標の設定、計画の作成・実施、評価・改善を行う。
  • 厚生労働省委託事業として、「放射線被ばく管理に関する労働衛生マネジメントシステム導入支援事業」が実施されている。

図 放射線被ばく管理MSとは「放射線被ばく管理に関する労働衛生マネジメントシステム導入支援事業」HPより

 

 

リスク・コミュニケーション

    • 放射線防護方法や被ばくについて不安がある医療スタッフに対して、リスク・コミュニケーションの手法を用い、不安の要因を探り、解決策を共考する。
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